ことの始まりは簡単である。
会長の「今年はエリア11版バレンタインデー&ホワイトデーを行います!」の一言で全ては決まった。
まぁそれはいつものことであったし、みんなもなんだかんだ言いつつすぐに了承した。

「会長〜それでエリア11版、ってどうやるんですか?」
「そうね...簡単に言うと、バレンタインデーは女子が好きな人とかお世話になった人とかにチョコレートをあげるの。
 それでホワイトデーは男子がそのお礼をする、ってところかな」
んーと、少し悩んだ後にシャーリーの疑問に会長が答えた。
自分の頭に入っていた知識も確かそんな感じであったし、何よりスザクが反応を示さなかったことからおおよそ正解なのであろう。
なんにせよ、リヴァルがじっと会長の顔を見つめているのが少しいじらしかった。
そんな様子に軽く笑みを浮かべながらもあまり興味なさげに本を読んでいると、ふいにミレイに名前を呼ばれた。
「14日、楽しみにしててね」
語尾に音符でもついているように楽しそうに言うミレイに、ルルーシュは笑って返すしかなかった。


そして、2月14日。
本日、今この時に至るわけである。




alentineDay f the  ounterattack




「ルルーシュくん、これ受け取って!」
「副会長、貰ってくれませんか!」
「ルルーシュ先輩、好きですっ」
休み時間になった途端に、人が何故か引っ切りなしにやってきた。
昼休みなんてひどいもので、ゆっくりご飯など食べていられなかったほどである。
どうにかできるだけかわし、安堵したのもつかの間。
本当の恐怖は、このあとの放課後にこそ待ち受けていたのだった。
昼休みや休み時間とは比べものにならないほどの女子の数に、思わずルルーシュは逃げ出した。
むしろあれは襲撃だ、とルルーシュは後にスザクにこぼすことになるのだけれど。

「匿って下さい!」
思わずそう叫んで生徒会室に入った。
そもそも自分は生徒会役員であったからここにいるのは当たり前である。
だから学校に姿が見えないとすれば、いるのはここにしぼられるのは必然であり、だからこそルルーシュは必死であった。
要するに自分がここにいることを彼女たちがばらしさえしなければ、事なきを得れるということである。
「ひゅ〜モテる男は大変ねぇ」
「ずるいぞルルーシュばっかり!」
はやし立てるミレイと羨ましげな声をあげるリヴァルを思わず睨む。
するとその様子に、うしろから見ていたスザクとシャーリーが思わず笑い声をあげた。
そのまま視線を動かしそのままの表情で二人も視野に入れると、お腹に手を当てたまま頭を小さく下げた。
「ご、ごめんルルーシュ。こんなマンガみたいなことが本当に起きるんだなって思ったら思わず」
頭を下げたというより、単にこらえきれずに前のめりになっただけなように思えてくる。
それよりなにより、スザクまでもが腹を抱えて笑っていることに、もはやどうでもよくなった。

だがとにかくこれでは堪らないと、原因であるミレイに視線を送る。
するとさすがに少しばつの悪そうな顔で言葉を返した。
「あーわかりました!ごめんねルルーシュ、ここまで酷くなるとは思わなかったから。でも...」
そこでいったん言葉を止めると、シャーリーを手招いた。
意図に気付いたらしいシャーリーが何かを掴んで笑顔でこちらに向かってくる。
「はい、ルル」
「私たちのはもらってくれるわよね?」
そう言って二人が差し出したのは、綺麗にラッピングされた箱であった。
おそらく中はチョコレートであろう。
「それは...もちろん、喜んで」
そう言って受け取ると、二人とも笑って返してくれた。
つられてルルーシュも淡く笑った。
スザクとリヴァルも既にもらっていたらしく、その手には同じようなものが握られていた。
きっと会長に貰った時はリヴァル大変だったろうな、なんて考えていると会長の大きな声が聞こえた。

「じゃあ今日は解散!」
「え〜っ、会長いいんですか?」
「確か今日は打ち合わせがあるとか言ってませんでしたか?」
仕事が終わらない修羅場を思い出して、皆少し青ざめた。
だがそんな様子をもろともせず、ミレイは楽しげに一言言い放った。
「いいのよ、どうせ今日は仕事になりそうにないから」
確かに、窓と廊下から聞こえる黄色い声の数々がそれを物語っていた。


 + + + 


「お邪魔しますー」
「どうぞ」
生徒会が解散になったあと、ルルーシュはスザクを家へ誘った。
食材が溢れそうだとか、旬の野菜がたくさんあるとかすごくおいしいのだとか。
なんだかんだと理由をつけて、何とか家に来てもらおうとした。

...理由は簡単である。

昨日作ったバレンタイン用のケーキをスザクに食べてもらいたかったからであった。
男が男に?なんて思われるかもしれないが、好きだからあげたいと思ってもいいではないか。
ルルーシュは思わず、自分自身に力説していた。
まぁそんな心配もなんのその。
スザクは普通に来てくれたし、ケーキも喜んで受け取ってくれたのだけれど。

「ルルーシュがこんなに用意してくれているんだったら、僕も何か用意すればよかったよ」
「別にいいさ、その気持ちだけで十分だ」
ケーキを綺麗に平らげたスザクは、シャーリーたちから貰ったチョコレートへと手を伸ばしていた。
よく続けて食べられるな、と半ば感心しながらキッチンへと空の皿を運んだ。
さっきのディナーの時だってけして少ない量ではなかったはずなのに、スザクのお腹のキャパシティが少し気になった。
甘いものは別腹というのは男にも当て嵌まるのか、と云々考えながら部屋に戻ると静かに俯いたスザクがそこにはいた。
満腹になって寝てしまったのかと近づくと、今さっきまで静かだったのが嘘のように勢いよく立ち上がると、ぎゅーっとルルーシュを抱き着いてきた。

「ほわぁぁぁああ!」

全く予期せぬ事態にさすがのルルーシュも奇声を発する。
だが一方のスザクはそんな彼の様子にも全く動じず、いいこと考えたんだ、と楽しそうに呟く。
楽しげなスザクの様子に、一瞬ぽかんと思わず動きを止め耳を傾けた。
「ぼく君にね、プレゼントがあるんだ」
そう一回切って、まるで世紀の大発見をしたかのようなきらきらとした口調に満面の笑みを添えたスザクは信じられないことを宣った。

「バレンタインは、僕をあげるねルルーシュ」

いっそ語尾にハートでもついてそうな勢いであった。
「...へ?」
そう言っていきなりボタンに手をかけ外し始めたスザクに、ルルーシュは固まる寸前であった。
だがなんとか冷静さを取り戻すと、スザクをどうにか止めようとしながらこうなった原因を考えた。
ほんのりと朱の入った頬。
あまり焦点のあっていなさそうな目。
舌ったらずなしゃべり方。
そこから導かれるのは...

「スザクお前酔ってるだろう」
「酔ってないれすー」
それは酔っているほどそういうのだと、ルルーシュはひそかに思った。
しかしスザクは何で酔ったのだろうか、特に激しい飲酒もしていないような気がするが。
辺りを見渡すと、スザクがさっきまで食べていたチョコレートが目に入った。
一つ食べてみると、確かに少し強めのお酒が中に入っていた。
そういえば、と思い出してみるとディナーの時の様子も思えばいつもと違かった気がしないでもなかった。
「お前、洋酒は弱いのか」
日本酒は平気だったくせに。
思わず独り言を呟くと、構ってもらえないことが不満なのかボタンを外すスピードを早めた。
「ちょっ!やめろスザク」
「なんでさぁ!いいじゃんかぼくをもらってよ、ルルーシュぅ」
舌ったらずなスザクの誘いに思わず天秤が傾きかける。
や、しかし...とルルーシュの頭の中でグルグルと巡り始めたその時、ちょうど玄関が開く音と共に今一番聞きたくない声が聞こえた。

「ただいまです、お兄様」
「ただいま戻りました、ルルーシュ様」
聞き慣れた声にすっかり我に帰ったルルーシュは有無を言わさないスピードで反射的にスザクの身支度を整えると、何食わぬ顔でスザクを連れて玄関へ向かった。
「おかえりナナリー、咲世子さん」
「やあーおかえりぃ、ナナリィ」
聞き慣れた声に少し違和感を覚えながらも、挨拶を返す。
「スザクさんいらっしゃっていたのですね」
「だが今から帰るところなんだよ、すまないナナリー」
愛妹の残念そうな顔が胸に痛くとも、今は少しでも早くこいつを部屋に返さなくてはと気合いを入れる。
すぐにでも、とスザクの腕を引いて外へ出ようとするとナナリーが呼び止める。
「じゃあせめてこれだけ、よかったらどうぞ」
そう言ってナナリーが差し出したのは可愛くラッピングされた小袋であった。
「生徒会室に向かったんですけど、いらっしゃらなかったのでこんな時間になってしまいましたが」
「ありがとう〜ナナリーぃ」
やはり違和感が拭えないナナリーは多少首を傾げながらも、どういたしましてと笑って返した。
「それじゃあ少し出てくるな」
「お兄様にはまたあとでお渡ししますね、お気をつけて」
「いってらっしゃいませ、ルルーシュ様」
二人に会って少しはスザクも落ち着いたのか、さっきまでの暴走が嘘のように静かになっていた。
一人で戻れるかどうか問うと、大丈夫。ぼくは帰れる。と片言ながらも平気だとスザクは呟いた。
これなら安心か、と寮の入り口まで送るとルルーシュは引き返すことにした。

薄情かもしれないがこれ以上一緒にいると、こっちもどうにかなってしまうそうだ。

それよりも、問題は明日だ。
どんな顔をして会えばいいのだろうか...


 + + + 


「おはよう、ルルーシュ!」
昨日の心配なんてなんのその。
いきなり普通に声をかけてきたスザクに面食う。
「...スザク、昨日の話なんだけど」
かまを掛けるようにそこで話を切ると、少し考える素振りをしたあと、あぁ!と納得したような声を出した。
「ルルーシュ大変だったよね、あんなにいっぱい女の子に囲まれて」
「まぁな。それより生徒会室から出たあと事なんだが...」
適当に相槌を打って、本題に入った。
思わず小声になってしまうのは許してほしい。
「ん、ルルーシュん家に行ったときのこと?お茶して、ご飯食べて、それで...」
そこでスザクは言葉を切った。
眉を寄せて小難しそうな顔をしながらぼそりと呟いた。
「あれ、そういえば僕いつ部屋に戻ったんだろう」
「スザク忘れたのか?そのあと本格的に意識が飛びそうになったお前を部屋まで連れて行ったの、誰だと思ってるんだよ」
自然なスザクの態度にまさかと思ったが、この様子だとそのまさからしい。
ホッとして、胸を撫で下ろしたい気分に駆られた。
記憶があいまいなスザクは頭を抱えていたが、きっと忘れているだろうから心配はないだろう。
一応多少の語弊を含ませながらもそう言ってやると、恥ずかしそうに小さく声を上げるとごめん、と続けて謝った。
「気にすることはないさ」
肩をぽんと叩いて席に戻ると、スザクも気持ち肩を落としながら自分の席に戻っていった。
その後ろ姿に少し痛む良心と、もったいなかったかもしれないという気持ちを同時に抱いた。
そんなことを考えてしまった自分を叱咤し、頭を切り替えようと小さく頭を振った。


このあと、スザク以外のメンバーに会長命令で『スザク洋酒禁止令』が内密に下されたのは言うまでもないであろう。



<END or NEXT?>




・後反・
ルルスザdeバレンタインです!
本編の時期を考えると若干パラレルな気がしますが、そこは二次創作ということで(こら

ブログに載せた時から結構修正してます。
少しは読みやすくなっ、てたらいいなぁと。


スザクってざるっぽい!
でも酔った勢いで誘っっちゃってもいいんじゃない!?
→日本酒はやたら強くても、洋酒弱いってのもいい!
で、できた話です(笑

さて、このあとのホワイトデーではどうなったのか?
というのはオフで続きます←
...すみません;


タイトルは知ってる方にはピンとくる対にしてみました(笑
お遊びです、すみません;


090505 修正掲載
090314 作成・掲載









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