「か、一騎!」
「ん?」
急に力んだ声で名前を呼ばれた一騎は、反射的に返事を返す。
「僕に」
...抱かせてくれないか、一騎
「...なっ!」
少しの沈黙の後、一騎は案の定顔を真っ赤にして反応を返した。
予想通りの反応だ、と総士はふっと苦笑気味の笑みを浮かべた。
でも、それでも食い下がるわけにはいかなかった。
悩んで、悩んで。
やっと決心して覚悟を決めて、告げた言葉だ。
「僕だって、至って普通の健康な青少年だ。そういう気持ちにだってなる」
「いや、それはわからなくも、ないんだけど、さ。でも、やっぱり...」
混乱しているのだろうか、片言で返事をしている。
その中で拒否する一騎に、総士は一歩下がってからこう言った。
「じゃあ一騎は、僕に抱かれたくはないということなんだな?」
ちょっと、強めの口調。
これでうん、と言われたら到底立ち直れない。
だが、そんなことは微塵も表に出さず、堂々と言った。
「うっ」
「そうなんだろう?」
痛いところをつかれ、一騎は口ごもる。
別に総士に抱かれたくないわけではない。
一騎だって総士と同じく、至って普通の健康な青少年、だ。
そういう思いがないわけではない。
しかし、だからといって素直に、はいと言えるわけではない。
「それは...」
長い沈黙が、続いた。
+ + +
「...わかった」
それを破ったのは、一騎ではなく総士だった。
その声に、一騎が顔を上げる。
「一騎が嫌がることは、したくない」
すまなかったな、一騎
確かにそう言い切った後、優しく呟いた。
「総士...」
そう言って自分に向けた背中が寂しくて。
思わず手を伸ばそうとしたが、
今の自分にそんな資格はないとその手をにぎりしめた。
確かに、総士のことは好きだ。
そういうことをしたい、とも思う。
でもまだ決心が定まらないのも確かで。
ごめん、総士
そう呟くことしか出来なかった。
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2006.XX.?? 作成
2007.05.06 掲載
「可愛いあの子を抱くまでの6ステップ//
1.素直に気持ちを伝えましょう
2.押してダメなら引いてみましょう」