「寒くはないかい、ナナリー?」

暖かくなってきたとはいえ、時より冷たい風が吹いてくることがある。
かわいらしいブランケットを膝にかけた少女は、愛しい兄に微笑んで返す。
「大丈夫です。お兄様こそ、寒くはないですか?」
「ありがとう、大丈夫だよ。それより紅茶のおかわりはいるかい?」
「はい、お願いします」
手に持つティーカップが軽くなっているのに気付き問うと、ナナリーは頷く。
温かい紅茶を渡してやると、安心したのか少し寄っていた眉は元に戻っていた。
「スザクは?」
「あ、うん。お願いするよ」
注ごうとポットを持ち上げるが、どうやら中身が少ないらしく一度置き、立ち上がる。
「すまない、新しく入れ直してくる」
目でお礼を言うと、ルルーシュは同じく目で笑い返してくれる。


姿が見えなくなったのを見計らって、ナナリーにまるで悪戯の相談をするかのようにそっと話掛ける。
「いいお兄ちゃんだね」
「はい!」
そう言って屈託のない笑顔を浮かべる少女につられて、スザクも笑みを浮かべる。

「でもお兄様ったらひどいんですよ」
少し頬を膨らませ、不満そうな声をナナリーは上げた。

彼女の口からルルーシュの愚痴を聞くのは珍しいので、促すように相槌を打つ。
「どうかしたの?」
「私がお湯を沸かそうとすると怒るんです。私だってお兄様にお茶を入れて差し上げたいのに」
危なくないようにと、やかんではなく電気ケトルがこの家にあることは知っていた。
しかし、それで
もルルーシュがナナリーにそれを使わせることは滅多になかった。
「そうだね、ナナリーだってそれくらいできるのにね」
「心配しすぎなんです、お兄様ったら」
「はは、子煩悩だなぁルルーシュも」
妹離れできない、というよりも子離れできない親のようであった。

ただし自分もそんなに親に恵まれた方ではなかったので、親、というものがどのようなものかよくは分からなかったけれども。

でもきっと、こんな感じなんだろうな、となんとなくそう感じた。


...きっとルルーシュにとって、ナナリーは妹であり、娘でもあるような気がする。

だからルルーシュは結婚しないんじゃないか、漠然とそうスザクは思っていた。


「でもね、スザクさん」
そう言うと、少し勿体振って一呼吸置いたあと、彼女はとても誇らしげに続ける。
「私はそんなお兄様が、大好きなんです」

うん、知ってる。
そんな思いを込めて、微笑み返す。



あぁきっと、彼女は愛でできている。



もしもルルーシュの愛が形を成したら、きっとこんな優しさに満ちているものになるだろう。

そんな世界になら、僕は生きてみたい。

戻ってきたルルーシュを見てふと、漠然とそう思った。



<END>

090721 作成
090803 掲載








「恋する貴方に15のお題(長文編)//
 9.やさしい子供のつくり方。愛を一身に受けて育った子。」










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