「一騎」
部屋の真ん中で静かに立ち、腕を組みながらこちらに声を掛けた。
静かに、だが、威圧感のある声。
なんの罪のないものが問われても、認めてしまいそうなくらいだ。
「なんだ?」
もう慣れた、とばかりに一騎は何事もなかったかのように返事をする。
「今日の帰り、剣司と何を話していたんだ?」
やっぱり、と聞かれた内容にため息をつきそうになる。
毎日のように誰かと話しているだけで、彼は不機嫌そうに聞いてくる。
それが、男だろうと女だろうとお構いなしに。
「別に...ただの世間話だって」
他愛なく返すのももう慣れたからで、最初は事細かに説明を求められたものだった。
でもそんなことで一々心配してくる総士が嬉しくて愛しいなんて、
自分も余程彼に心底夢中なのだと笑えてくる。
他の子と、『世間話』と称して話されるのは総士のこの独占欲について。
よくついていける、だの。
よく耐えられる、だの。
呆れからなのか、褒めからなのか、よく言われてきた。
自分でも正しくそうだと思うが、きっとそんな総士だから好きになったんだろうとも思う。
結局俺も、相当侵食されていると思う、心の奥の奥まで。
お前に。
<END>
2006.12.30 作成
2007.01.05 掲載
好き過ぎる7のお題//相当侵食されていると思う、心の奥の奥まで