「...それでね、その時カッチャンたらさぁ」 「三谷」 顎で亘の背中のほうにある教室のドアを指した。 「噂をすればなんとやら」 後ろを向くと、『カッチャン』がそこに立っていた。 「...っ、あ」 ありがとう、と小さく言うとドアのほうへ小走りで向かった。 動揺を、悟られないように。 名前を呼ばれた時、心臓を掴まれた錯覚に駆られた。 忘れたい、んだ。 でも忘れられなくて。 今ここにいる美鶴も、あの時のミツルも。 どっちも君だから。 だから忘れてはいけないんだと思った。 君の頑張りを、忘れてはいけないんだと思った。 それでも美鶴の前でミツルを思い出してしまうのは、 君を裏切っている気がして辛いから。 僕は、どうすればいいのだろうか。 <END> 2007.02.17 作成 2007.05.01 掲載 「夏色課題//忘れたい日 忘れられない日」
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